ARC-Vocal 主題の歌


ARC-Vのオープニングが好きです。


自分、アニソンには厳しい嗜好を持っておりまして。
一言で言えば、「作品の世界観がよく出ていてかつ普通の曲としても通用するもの」が神曲認定に近い感じです。

 ひと昔前のゴールデンにアニメをやっていた時代はタイアップが多く、例えば明治時代の剣戟アクション「るろうに剣心」に少女の失恋の歌「そばかす」を採用してみたり(経緯からもうアーティストありきみたいな)、聞きなれたらそんなもんと慣れても、あまりに作品とリンクしない作品も多々ありました。

 一方最近主流なのは登場人物の声優が歌うキャラソン寄りの曲。前者とは逆に作品の世界観には沿って作られるのですが、内輪受け・専用曲の気が強く、場を選ぶ。一般有線でそうそう流れてこなかったり、サブカル系の店でまとめて流されたりするあたりご理解頂けるでしょう。
 「ウィーアー!」なんかも作品における象徴的ないい曲だと思うんですが、こういったアニソンを半ば専門に手掛けるアーティストの曲も汎用性のくくりでは近しい。「ONE PIECE!」って言っちゃってるしね。


で、その両者ともになんだかなぁと思う部分がある中で、遊戯王の曲ってなかなか際どい線ついてきてると思うんです。
「折れないハート」が特にいいんですが、遊馬のイメージをよく表現しつつ、専門用語は殆ど使っていない。
ああいう塩梅が個人的に好みなわけです。

もちろんデュエルって入れてたり、「ガッチャGo!Go!」とか言ってる曲もありますが。
天地開闢って「マスターピース」で歌ったら開闢の使者が禁止から帰ってきたなんて与太話もありましたね。


 で、話はARC-Vに戻るのですが、本作のオープニングの凄いと思う点は「ストーリーに細かく沿っている」要素が大きいところです。
 もちろんGXでもある程度物語のテンションとリンクしていると思いますし、5Dsもサテライトの荒涼感ある前半と街が再編された後半で曲の印象が結構変わっています。
 ただそれらと比べても、ARC-Vの主題歌はストーリーの進行、つまり遊矢の成長と密接した、作品どころか物語一編に対するイメージソングだと感じます。
 こういう曲の作り方が出来るんだなって、驚嘆している次第です。

エンディングも初期はこれまでになく顕著なキャラソン寄りだったりと色々多角経営を感じ話題はあると思いますが、ひとまずオープニングに絞って語らせてください。
Believe×Believe /超特急   図2  

「YOU(遊)」で韻を踏んだり、「魂のペンデュラム」「お楽しみはこれからだ」といったキーワードもふんだんに取り入れたりとガチガチのアニソン側の曲。
「Ride on now」で新要素・モンスターに乗って戦えるアクションデュエルも映像とともに表現しています。

主人公が扱う劇場型対戦思想「エンタメデュエル」を映像で表せるように、ダンスユニットによるアップテンポで楽し気な曲。
虹を走ったりエンタメイトが舞ったり、色合い的にも非常に明るい。

  図1  図3

遊馬も度々口にしていた「デュエルは楽しいものだ(殺伐とした闘争の道具じゃない)」といった思想を更に直接的に昇華させた、「人を楽しませるデュエル」ひいては「カードゲームは楽しいぞ」といった販促アニメとして伝えたいものをふんだんに魅せた曲だと思います。
ビリビリと韻を踏んで「シビれるぅ~」を彷彿とさせるタイトルや、「揺れる眼差し」なんてある種のパロカードを産んだ「揺れるママママインド」など、ネタにも事欠かない。
「4人の遊矢がいる」という作品の主軸設定である伏線の仄めかせも欠かさない。

ただ当時の遊矢は精神的に軟弱な部分もあり、あくまで「理想」を歌った曲でもあります。
物語における原点であり達成したい最終到達点の姿でもある。そんなことを表現した歌。






Burn! /超特急  図5

 同じアーティストが続投(5Ds後半など前例は有り)。 ビリビリ→電気からBurn→炎と着火している。
 遊戯王伝統の大会編という希望や挑戦心に満ちた展開に沿った、爽快感のある曲です。
 そのため既に終わっていた柚子vs真澄や、放映開始頃の遊矢VS沢渡(2戦目)のイメージカットを使い対戦のイメージが挟まれています。

  図4  図6

 一方、この時期は黒咲vs素良で前期からの謎の断片が明かされ始めた頃にもあたります。
  まだまだ新たな謎を振りまき続けていた時期の曲ながら、零児が見据えるプロフェッサーやユーゴ・ユーリの顔見せ(このクリアウィングは本編登場後改めて描かれる)など、更なる伏線をちりばめ先への期待感を深めていました。
 まさかのライディングデュエルを彷彿とさせるカットで、「ARC-Vが何をする作品なのか」の片鱗が見え始めた頃でもあります。

 一方でオベリスクフォースの侵攻など大会そっちのけで重い展開になりつつあり、徐々にオープニング詐欺になっていきます。
この頃の遊矢は、迷い失敗しながらも理想を曲げない「意志をもつ」強さを手に入れ始めていたので、非常に前向きなこの曲のようになりつつありました。
しかし勝鬨をオーバーキルしてドン引きさせていたりと、空回りしていた悩ましい時期の始まりでもあります。

 ちなみに放映が秋クール中盤から冬クール間までと、変な時期に変わったので印象の割に使用期間は意外と短かったりします。



ハナテ /劇団ナイアガラ 図7

 「効果発動」「モンスター」など、完全にゲームを意識した言葉が飛び交う曲。
 アニメではカットされている部分にも、「陰謀」「未知のバトル」「リベンジ」など、展開そのものを歌っている箇所があります。
 アーティストも交代し、緩やかながらも透き通って伸びやかな曲となり新たなステージへと印象を変えています。
 劇団ナイアガラは同じ名義では他の曲を出していないため、ほぼこの曲のための企画バンドともいえそうです。

 シンクロ次元本格突入までの1ヶ月程度は、その光景(5Dsを意識した世界観)を映さないために戦闘シーンや月光舞猫姫で誤魔化したりと結構オープニングを弄っていた曲でもあります。
 参考リンクに比較動画を載せてありますが、同じシーンのタイミングをズラしている割に、リズムとシンクロさせて映像を作ってあるせいかうまいこと当てはめ直しが成立しています。
 繰り返しパートの1回目と2回目でスタートしなおしているカットなど、綿密に構成されていることがうかがえる、職人仕事を感じる逸品です。

 丁度ランサーズ結成の回からの放映で、「キズナ」など過去の遊戯王でも大切にされてきたワードも入り始めます。
この時期は黒咲・セレナの独断専行や零羅を気遣う遊矢など、チームの不和や協力をテーマにした描写も多く、展開としてもハメコンボに引き籠る長次郎を説得するなど、遊矢や黒咲ら個人の人物描写から「関わりあい」に話がシフトしつつあった頃でもあります。
そしてその変化は、後に気づく「エンタメデュエルは一人だけでは行えない」ということに対して暗喩的でもあります。


図8 図9 図10

切り札 /cinema staff

 秋クール開始・大会編緒戦全試合が終了し中ボスといえるデニスも撃破という非常にキリのいいタイミングで切られた札。
 裏切者判明を超え、ここから先はユーゴvsセレナ、クロウvs黒咲など、凝り固まった心を溶かしていく展開が続きます。
 
この辺から「曲と話の相乗効果」的な視点での真価を発揮してきます。
 示唆的な表現を含む映像が多いのもこの曲の特徴です。

・飛び交うカードの中からオッドアイズを選び取って笑顔で発動する遊矢
・神妙な顔から口で笑うユート・ユーゴ ユーリは危険な目 遊矢は口にかからない
・放映開始前話でついに公開された瑠璃
・「君こそが主人公だろう?」

先述の2人に加え、ジャックvsセルゲイなど、敗者にも満足感のあるカウンセリングデュエルが続きます。
その一方でシンジや観客に何も伝えられなかったり、暴走しクロウを裏切る結果になったりと、内なる何かや周囲に翻弄されっぱなしの遊矢。
旅立ちまでに「意志を貫く」ことは出来るようになってきたものの、その意志そのものの是非を問われ続けていた時期でした。

 歌詞としては、タイトルがいかにもな「切り札」な反面、「シンクロ」という言葉がひとつでてくるだけで専門用語はほぼありません。
しいて言えば「その笑顔で世界を揺らせば」が、スマイルワールドやペンデュラムを彷彿とさせるか。
 そしてなにより、過去3曲欠かさず入っていた「お楽しみはこれからだ」が無い。
一方で、「君の思うまま」「君のもの」「自分次第」と、自己を持つことをことさら強調しています。
与えられたキメゼリフを卒業し、キーワードを組みあわせたような歌詞から、真に「作品テーマを語る」歌になったように思えるのです。
キーワード量でいうと《ハナテ>ビリビリ>Burn>切り札》のような形となると思うのですが、個人の感想としては曲の汎用性と展開上で「理想のエンタメディエルをできているか」はある程度相関しているような気もします。

シンクロ次元編は一貫して、「ジャックの言葉を理解できるか」が焦点となっていました。

 「意志を貫くためには相手の事も知らなくてはならない。独りではできない。」
 「しかしその根底の意志は誰かの影響下だけではなく自身で見つけなければならない。一個の自分であらねばならない。」

ペンデュラム召喚という大量展開やリベリオンをはじめとした突破力の高い大物を活かした圧殺プレイが多かった遊矢。
《調律の魔術師》から小さなプレイの積み重ねに気付き、ストレートペンデュラムという形で理想を体現した答えを見出しました。
 父親の強い影響や周囲の目まぐるしい変化に流されるままだったのが、ここで遂に物語を牽引しうる「主人公」としての意志を持つに至る事を紡いだ、シンクロ次元編後半を見事に表現した曲ではないでしょうか。


  図11 図12

キボウノヒカリ /Unknown number!!

 今回の記事を書きたいと思わせるに至った、新ユニットのデビュー曲にしておきながら重苦しい歌い出しのこの曲。
 奇しくも1時間SPの後半が放映開始となり、今回は次元移動のタイミングに合わせて転換が図れました。
 それだけに、描かれる凄惨な光景の衝撃が悲壮感に満ちたイントロと合わせ強調されます。

 ARC=虹は今作のモチーフ(PENDULUMの演出の他、モンスター5+スケール2で賞味7体となる)の一つとして扱われています。
 これまで虹がかかるシーンも多く(「切り札」にはない)、全体的にカラフルでにぎやかなOPでした。
 その中で色を失った世界から始まるのも異質です。それを受けサビでは色彩を取り戻すのがまた印象を強めます。

 この曲も「ショータイム」以外にキーワードはほぼ無く、ただただ苦しみとそこからの脱却の意志を歌っています。
 言ってしまえば反戦の歌のようなもので、これまで以上に直喩的に現状を描写しているといえます。
 ジャックとの対戦を経て自分の言葉での理想をみつけつつある遊矢。
 しかしそんな絵空事を言ってられない厳しい環境を目の当たりにしながらも、実現のためできることを模索していく。
 スマイルワールドを効果的に活かしたコンボ使いに見られるように、初期と比べ本当にブレなくなったと思えます。


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SoulCatcher[s]が連載終了後もずっと好きな私です。
あの表題曲も(作者はタイトルだけで選んだと公言していますが)作中の編ごとの中心キャラクターの状況に非常に寄り添っており相乗効果が凄かったわけです。
ある種曲の世界観から後付で話をイメージビデオのように当てはめたものという一面もあったと思います。

ARC-Vの主題歌は正にその逆というか、話を盛り上げるためにピッタリの曲として作られているように思うのです。
しかも全編を通した「楽しいデュエル」というテーマを、主人公がそのあり方について悩んでいく段階とリンクさせて。


始めに例示したような、主題歌と本編の関わり合いについてまとめると下記のようになるでしょうか。

 タイアップ   :ただ曲を使っているだけ
 イメージソング:作品世界の雰囲気に近しい曲
 キャラソング :作中人物が歌っていることを念頭におかれたような表現をする曲
 アニメソング :作品世界を直接的に表現、作品名や専門用語も容赦なく使う

アニソンに振り切られすぎても困るのでつまり個人的好みはキャラソン寄りのイメソンだってことなのですが、これは作者自ら作詞でもしないと早々できないような深い理解度を必要とする代物だと思っていたわけです。イメソン風な雰囲気を匂わせるタイアップが限界かと。
 それを結構な精度でやってのけているchinema staffやヒャダイン、むしろそのためにユニット作ってるんじゃないかとすら思えるアーティストの方々には頭の下がる思いです。
4つの世界観を股に掛けそれぞれの主人公たちのストーリーを紡ぎあわせる群像劇ともいえる、なかなか意欲的な構成の本作ですが、あくまで主題は「遊矢の見つけていくもの」、つまりメイン主人公の成長譚であるということがひしひしと伝わってきます。

成長、つまりその過程として失敗や回り道も描いているわけで、そのためにいわゆる「面白くないデュエル」も意識的に描いていることとなり、視聴者側からすれば作品そのものがつまらないとも思えうる諸刃の剣を研ぎ続けているような状態が本作の展開なのだと思います。
そのせいか、ある程度自己の成熟している権現坂や沢渡の決闘は安定して面白いことになり、遊矢や黒咲は変化していく過程で評価が別れる結果になっているようです。
最終盤では原点回帰しつつより洗練された「楽しいデュエル」がみれるんじゃないかと今のうちにハードル上げておきます。

まあつまり、ARC-Vはただ無闇に過去作引っ張りだしてるだけじゃなく、色々な本気が重なった上での今なんじゃないかなって思っているって話です。
回想の多様などでテンポ悪いこともありますが、定めた作品テーマに誠実に向き合っているクリエイター魂のようなものを感じて、みていて気持ちのいい作品だなと思っております。
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テーマ : 遊★戯★王
ジャンル : アニメ・コミック

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戸付湯歌

Author:戸付湯歌
たかが知れている。

思いつきはツイッター経由。
 思考の嗜好であり、試行の歯垢に過ぎない。

主に遊戯王のカードやデッキの考察、自分専用まとめwiki。
たまに漫画・アニメ評とか。
神海英雄先生のソウルキャッチャーズは永遠の魂です。

主要記事
遊戯王 過去の妄言
ご当地大戦 布教用考察
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